声にできない“アイシテル”
「うん、分かってるよ」

『泣かせたら、ただじゃおかないからな』

「大丈夫だって」

『絶対だぞ!』

「あーっ、もう、しつこい!!」


 そんなやり取りを数回繰り返す。



「もういいだろっ。
 切るぞ!」

 乱暴に言って、終話ボタンに指をかける。


 すると小山は電話の向こうであわてた声を出す。

『ま、待ってくれ。
 最後に一言っ』

「ったく、なんだよ」




『桜井。
 お前も幸せになれよ』


 照れたように言ってくるから、俺も釣られて照れる。

「なんだよ。
 急に・・・」

『俺はイトコのチカちゃんも、友達のお前も大切なんだ。
 だから、さ』


 本当にいい奴だよ、小山は。


 ちょっと胸がジンとする。
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