声にできない“アイシテル”
 そしてチカの誕生日当日。

 12月というのに、珍しく穏やかに暖かい。


 学校帰りの途中にある公園に寄った。


 少しだけ陽が傾いて、薄いオレンジ色の光が辺りを照らしている。

 チカと並んでベンチに腰を下ろした。


 遠くで子供たちの楽しそうな声がしているけど、俺たちの近くには人がいない。







 カバンの中から包みを取り出す。

「誕生日、おめでとう」


 チカがびっくりする。


 何回か瞬きした後、メモに書き出した。

“私、今日だって教えてないよね?”


「小山に言われた。
 付き合って初めての彼女の誕生日は重要なんだぞって。
 すっげぇエラそうにさ」 

“もう、圭ちゃんたら。
 ね、開けていい?”


「どうぞ」

 チカは嬉しそうにラッピングを解く。


 中から出てきたのはチカが好きそうな色のペンと、やたら分厚いメモ帳。


 その厚みに目を丸くしている。
< 169 / 558 >

この作品をシェア

pagetop