声にできない“アイシテル”
「両親は、俺を残して死んだんだ。
 何の前触れもなく、何も言い残さず、自殺した」


 感情もなく淡々と言うと、チカの息を飲む音が聞こえた。


 俺は話を続ける。

「“なにがあっても、守ってやるからな”って言ったのに。
 “ずっと私と仲良くしてね”って、言ったのに、突然この世からいなくなって・・・。
 それ以来、俺は人を信用することが出来なくなった。
 “好きだよ”って、“ずっと一緒だよ”って言ってくれる人はいたけど、どうせ俺を置いて行ってしまうくせにって思えてさ・・・」


 ひざの上においていた俺の手が、小刻みに震えだす。


 チカが静かにメモを差し出した。

“お父さんとお母さんのこと、今でも恨んでる?”


「正直恨んでる。
 叔父さんや叔母さんにはだいぶ心が許せるけど、父さんと母さんのことは・・・。
 だって、突然独りぼっちになったんだよ!?
 悲しかった。
 寂しかった・・・」


 握ったこぶしに力が入る。



 この世のすべてが終わったかのように思えたあの日。


 大好きな両親においていかれたあの日。



 たった一人、残されたあの日。



 『絶望』なんて言葉は生ぬるいとさえ感じた。


 それほどの虚脱感に襲われたんだ。
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