声にできない“アイシテル”
“そっか”


 一言だけ書いて、チカは俺のこぶしに自分の手を重ねた。

 そして俺の手を包むように握ったり、ポンポンと軽くたたいた後、またペンを動かす。



“でも、私はアキ君のお父さんとお母さんに感謝してる”


「え?」

“だって、お二人がいたからアキ君は生まれてきたんだもん。
 アキ君のご両親に感謝してるよ”


 チカが微笑む。

 その顔に同情の色はない。


 


 これまで俺の心の奥底で固まっていた黒い感情が、ほんの少し軽くなる。


「・・・そうだよな。
 父さんと母さんがいたから、俺はチカに逢えたんだよな」


 今はまだ完全にとはいかないけど、いつかは父さんと母さんが許せそうな気がしてきた。


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