声にできない“アイシテル”
「そうだ、チカ。
 手話って出来る?」


 彼女がきょとんと俺を見る。

 そしてゆっくりとうなずいた。


「だったら、手話で話せばいいよ。
 そうすれば会話を書き出さなくてもいいんだしさ」


 チカは数回瞬きしたあと、ぷっと吹き出した。



―――なんで笑うんだ?

 今度は俺がきょとんとする。



 チカはくすっと笑いながら、メモにペンを走らせる。

“私が手話で話しても、聞き手の人が手話を理解できなかったら会話にならないんだよ。
 アキ君、手話を読み取れるの?”


「・・・あ」

 チカが笑った理由が分かった。



 そうだよなぁ。

 いくらチカが手話を使っても、俺が彼女の手話を理解できなかったら意味ないじゃん。



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