声にできない“アイシテル”
―――はぁ、怖かったぁ。

 ほっと息をつく。


―――しばらくすれば、あきらめてここからいなくなるかな?


 それまでおとなしくしていることにした。



 だけど、私の予想に反して野良犬はちっとも向こうに行ってくれない。


―――困ったなぁ。
   お母さん、心配してるよね。

 迎えに来てもらおうと思って、私はコートのポケットから携帯電話を取り出す。


 2つ折の携帯を開いた。

 画面は暗いまま。


―――あ、そうだ・・・。

 さっき充電するの、忘れちゃったんだ。


―――これじゃ、お母さんにメールできないよ。


 すぐ目の前に公衆電話があるけど、私には意味がない。



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