声にできない“アイシテル”
 それというのも。

 俺の姿を見てひそひそと何か言ってる女子達の存在が、俺にとってはうるさくてたまらない。


 いや、声のボリュームはささやくほどなんだけど。


 気になるのはその内容。


 気になるというか、気に入らない。





 耳に入ってくるのは、


『かっこいい』

『素敵』

『彼氏にしたい』

『こっち向いて』


 という、こっちからすればくだらなすぎるささやき。


―――こんな俺のどこがいいんだ?


 外見のせいで面倒に巻き込まれているためか、いまいち自分のことが好きになれない。

 父親の長身が遺伝した事と、子供の頃から体を動かすのが大好きだったことが幸いしてか、バランスよく成長した。


 顔はまぁ、悪くないほうだろう。

 待ちを歩くとスカウトされるくらいだし。



 子供のころは『かっこいい』って言われて嬉しかった。

 
 だけど。

 中学に入った頃から俺の外見でしか判断しない女が群がってきて。


 それがとてつもなくうっとおしく感じた。

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