声にできない“アイシテル”
 電話ボックスに駆け込んでからかなり時間がたっているのに、まだ野良犬は近くにうろうろしている。


 外灯があるから真っ暗じゃないけど。

 寒さだけはどうにもならない。

 私は冷たくなった指先に息を吐きかける。
 

 そして、迷いに迷って受話器に手を伸ばした。 



 アキ君の邪魔になるようなことはしたくない。

 ただでさえ、いつも彼に迷惑をかけている私だから。

 
 だけど、私を助けてくれそうな人は彼しか思い当たらないから。

 今の私はアキ君の『何かあったら連絡して』という言葉にすがるしかなかった。


―――後でいっぱい謝るから、アキ君、助けて・・・。


 私は彼の携帯電話の番号を押す。


―――公衆電話からなんて、変に思うよね?
   出てくれなかったらどうしよう。

 呼び出しのコール音が聞こえてくる。


―――アキ君、出てっ!


 心臓がドキドキと早くなる。








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