声にできない“アイシテル”
 冬の空気に冷え切った指先は当たるたびに痛いけど、それしか方法がない。

 
 我慢して、何度も繰り返す。 

 すると再び彼の声が聞こえた。


『あの、どちら様ですか?』


 切られなかったけど、何も伝わっていない状況は変わらない。


『もしもし?
 用件は何ですか?』


 どんどん不機嫌になっていくアキ君。




―――アキ君、分かって! 


 電話の向こうの彼に向かって、声なき声で叫んだ。



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