声にできない“アイシテル”
 アキ君は私が伝えようとしていることは何なのか、この音から必死に掴み取ろうとしてくれている。 

『どこだ・・・?
 どこだ・・・?!』

 アキ君の独り言が漏れ聞こえる。


 文字も言葉もないこの状況から、私のために必死で頭を巡らせてくれている。


 彼の一生懸命さが嬉しくて、涙があふれそう。

 でも、ここで泣いたら、アキ君にもっと心配をかけてしまうから。


 私はぐっと我慢して、ただ、指輪を打ち付け続ける。






『公園にいるのか? 
 指輪を渡したあの公園なんだな!?』


 アキ君が音の正体に気付いてくれた。
 
―――そうだよ!!

 指輪を一度だけ打ち付けた。


『分かった。
 今そこに行くからっ!』


 彼の想いと私の願いが通じて、ようやく私の居場所を分かってもらえた。
 






 私は受話器を元のフックにゆっくりとかける。

―――よかった。
   アキ君、分かってくれた。


 嬉しくて、ほっとして、ヘナヘナとその場に座り込んでしまった。
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