声にできない“アイシテル”

足し算:SIDE チカ

 アキ君がおしょう油を持ってくれて、空いた手を私とつなぐ。

 並んで歩き出した。


「さっきは本当に驚いたよ。
 公衆電話からなんて、初めてかかってきたし。
 何でメールにしなかったんだ?」

“充電が切れてたのを忘れてて・・・”

 私はしょんぼりうつむく。


「俺もよくやるよ、ソレ」

 だから気にするな、と笑いかけてくれる。

「で、なんでわざわざ離れたところにある公園の電話ボックスに?
 公衆電話なら他にもあるだろ」

“野良犬に追いかけられて、逃げてるうちにいつの間にか公園に来てて。
 逃げる場所がなくって、それであの中に入ってたの”  


「へぇ。
 犬、苦手?」

 私は大きくうなずく。


 追いかけられたときのことを思い出して、ブルッと震えた。

 するとアキ君が、つないでいた手にきゅっと力を入れる。


「俺がいるんだから、もう怖くないだろ?」


 彼の手のぬくもりと、優しい笑顔に、大きく、大きくうなずいた。



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