声にできない“アイシテル”
“だけど、桜井先輩はそんなことないんですね。
 表情がコロコロ変わって、子供みたいなところもありますし。
 それに、心の傷を心配してくれる優しい人だって分かりましたから”


―――・・・よかった。

 そっと安堵のため息。


 彼女に嫌われていなかった事が、事の他嬉しい。






「俺は高飛車なんかじゃないよ」


 少し苦笑いしながらそう言うと、すかさず差し出されるメモ。



“顔がいい事は否定しないんですね?”

 下から俺の顔をチロリと見上げてくる。



「あっ、いや、そのっ」

 彼女の鋭い突っ込みに、言葉が出ない。



 あたふたしていると、ペロッと舌を出す彼女。

“ちょっと意地悪なこと書いて、ごめんなさい”





 そして、少し間を空けた下のほうに 

“先輩は本当にかっこいいです”

 と書いてあった。

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