声にできない“アイシテル”
 するとアキ君が私の正面に立った。

「あのさ、世の中には完璧な人っていないと思う。
 誰だって足りない何かを持ってるんだよ」


 私はしゃくりあげながら、黙って彼の話に耳を傾ける。


「恋人とか夫婦って、足して2になればいいんじゃないかな。
 1たす2は2だけど、0.5たす1.5も2だよ。
 お互いが相手の足りない部分を補えばいいと思う。
 俺が言ってること、分かる?」


 私は泣きながらうなずく。


「俺はチカにない声を持っているけど、チカは俺にない優しさや強さを持ってる。
 俺が1.5のときもあるけど、0.5のときもある。
 それはチカにも言えることだから」


 つないでいた手をぐっと引かれ、私はアキ君の胸にコツンとおでこをつけた。



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