声にできない“アイシテル”
「それは、わざわざありがとうございました。
 上がっていきませんか?」

 娘を送り届けてくれた俺にお礼のつもりか、お母さんがそう申し出る。


「いえ。
 送るだけのつもりでしたので」

 断ろうとすると、チカが俺の手首をきゅっとつかむ。

 そしてほんのりと顔を赤くして、見上げてきた。


 そのしぐさと、その視線には『もう少し一緒にいたい』と言う気持ちが込められている。

 俺は少し笑う。

「じゃぁ、せっかくなので少しだけお邪魔します」


 すると、チカもニコッと笑った。


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