声にできない“アイシテル”
 リビングに通され、チカと横並びでソファーに座る。

 お母さんがジュースとクッキーを出してくれた。


 俺がジュースを飲んでいる横で、チカはこれまでに起きたことをお母さんに説明している。


「えっ?
 さっきの電話、チカだったの?」

“そうだよ!
 お母さんたらぜんぜん分かってくれないんだもん。
 だから、悪いと思ったけどアキ君に連絡したの”


「アキ君?」

 お母さんが首を傾げる。


「あ、俺のことです。
 “あきら”なので、そう呼ばれてます」


 親しげな呼び方にお母さんは気がついたらしい。

「もしかして、2人は?」

「あっ・・・、付き合ってます。
 すいません、話をするのが遅くなって」

 
 はじめに『彼氏です』って言えばよかったか?

 
 でも、なぁ。
 
 彼女の親を前にすると、妙に緊張しちゃってさぁ。

 彼氏って言い出せなかったんだよな。


 隠しておきたかったわけじゃないんだ。

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