声にできない“アイシテル”
「あ、ああ。
 いいのよ、それは。
 もう、チカったらいつの間にこんな素敵な彼氏をつくったのよ?」


“いつの間にって言われても・・・”

 グラスに刺さったストローを指でいじるチカ。


「桜井さん、ぜんぜん知らなくてごめんなさいね。
 この子ったら何にも話してくれないんですよ」

 少し困ったような笑顔でお母さんが言う。


“だ、だって・・・。
 恥ずかしくって、なんて報告したらいいのか分かんなかったんだもん・・・”


 顔真っ赤にしてジュースを飲む。


 一気に飲み干して、少し乱暴にグラスを置くチカ。

“それより、どうして私からの電話を気付いてくれなかったのっ!?”



「そんなこと言っても、分からないわよ」


“アキ君は分かってくれたのにぃ”

 恨めしそうにチカが母親を見る。


「え?
 あの無言電話を?」

 お母さんが驚いたように俺を見た。


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