声にできない“アイシテル”
 彼女がリビングを出てしばらくすると、俺の正面に座っているお母さんの表情が少し険しくなった。

―――どうしたんだろう?


 じっとテーブルを見つめていたお母さんが顔を上げた。

「娘とはどういうつもりで付き合っているんですか?」


「えっ?」

 突然切り出されたセリフに、俺は言葉を失う。



「ごめんなさいね、いきなり。
 でも、親として知っておきたいの」

 俺を見る目が何かを探り出そうとしている。


「いえ、気を悪くしたわけではないので。
 遠慮なく訊いてください」

 
「じゃあ、失礼を承知で・・・」

 と言ったものの、お母さんはどう切り出そうか言葉を捜している。

 黙ったまま瞬きを繰り返し、ようやく口を開いた。



「チカとは遊びで付き合っているの?」




 俺はギョッとした。

 まさかそんなことを聞かれるとは思ってなかったから。
 

「ち、違います!
 そんなんじゃありません!!」

 予想外の言葉に驚いたけど、はっきりと否定した。
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