声にできない“アイシテル”
「そうだったの」

 お母さんは半信半疑ながらも、俺の話に納得してくれたみたいだ。


 なんでも話を聞いてくれそうなお母さんの雰囲気に、俺はつい本音を漏らしてしまった。

「実は、かえって俺のほうが心配してるんです。
 チカさんに捨てられやしないかって。
 いい所といえば顔しかないので・・・」


 ここでリビングの扉が勢いよく開いた。

 着替えを済ませたチカが仁王立ちしていたのだ。



「チカ!?」

 驚いたお母さんが声をかけるけど、彼女はなぜか俺をにらみつけている。


「どうかしたのか?」

 今度は俺が声をかける。


 するとツカツカと歩み寄って、座っている俺の肩にしがみついてきた。


“なんでそんなこと言うの!?”

 彼女は怒りに唇を震わせている。


“アキ君は顔は確かにかっこいいけど、でも、顔だけじゃないことを知ってるもん!
 面白くて、優しくて。
 ホントにホントに、自慢の彼氏なんだよ!
 私がアキ君から離れるはずないもん!!
 アキ君を捨てるはずないもん!!”


 一気にまくし立てると、チカは俺の首にしがみついてボロボロと泣き始めた。

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