声にできない“アイシテル”
「チ、チカ!?
 落ち着いてっ」

 俺は彼女をなだめようと、とにかく優しく頭をなでた。

「ごめん、変なこと言って。
 そうだよな。
 チカは俺の顔だけを見ていたわけじゃないんだよな」


 チカはひっく、ひっくと泣きながら言う。

“そうだよっ!
 アキ君が一生懸命なところも知ってるし。
 私を大事にしてくれてるところも知ってるんだからっ。
 ずっと、ずっと、そばで見てきたんだからっ!”


―――そうだね。
   ずっと、そばにいたよね。 

 付き合ってから今日まで、お互いが少しでも分かり合えるようにそばにいた。

 
 俺がチカを見てきたように。

 チカも俺を見てくれていたんだ。


 『桜井 晃』という人間を見てくれていたんだ。


“バカ、バカ。 
 アキ君のバカァ。
 今度アキ君が自分のことを悪く言ったら、絶対許してあげないからね!
 絶対、絶対、許してあげないんだから!!
 いい?
 分かった?”
 

 泣きながら怒る彼女の顔はすごく真剣で。

 俺のことが大好きって伝わってくる。


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