声にできない“アイシテル”
 25日は良い天気になったけど、すっごく冷え込んだ。

 俺は厚地のコートを着て、マフラーもしっかり巻いてチカを迎えに行く。



 家の外で俺を待っていた彼女は俺以上に厚着で。

 真っ白な毛糸の帽子。
 
 真っ白なマフラー。

 コートも、手袋も真っ白。



「なんだかウサギみたいだな」

“そう?”


「ちいさくて白くてフワフワしててさ。
 それにかわいい」


 とたんにチカの顔が赤くなる。

“べ、別にかわいくなんかないよ”

 ワタワタと手を振り回してあわてる様子が、またかわいい。



「俺が“かわいい”って言ってんだから、素直にうなずいておけばいいんだよ」


 今度は耳まで赤くした彼女に、俺はくすっと笑った。



 こんな楽しい気分でクリスマスを迎えたのは、両親を亡くして以来初めてだ。


 チカをつれてくることになって、叔父さんも叔母さんも相当はしゃいでいたけど。



 一番はしゃいでいるのは俺だな。


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