声にできない“アイシテル”
“・・・アキ君が別世界の人に見えちゃった。
 お家が大きくて、お金持ちでさ。
 将来、叔父様の跡を継ぐんでしょ?”


 俺はうなずいた。


 ずっと前から『養子にならないか』と言われていた。

 初めてその話を聞かされた時は、誰のことも信用してなくっていい返事は出来なかった。


 だけど、チカが人を信じる心を俺に取り戻させてくれたから。

 養子の話を正式に承諾した。


 高校を卒業したら、俺は叔父さんと叔母さんの子供になる。





“そっかぁ。
 アキ君は将来、ホテルの社長さんになるんだね。
 すごいなぁ”
 
 

 チカが目を伏せる。


“・・・ますます別世界の人になっちゃうんだね”


 ポツリとつぶやく。



 すごく寂しそうに。

 すごく悲しそうに。


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