声にできない“アイシテル”
 俺はチカの目の前にヒザをついて、彼女が抱きしめていたクッションを取り上げた。


“アキ君?!”

 驚いたチカが顔を上げた。


 そして、俺の顔を見てもっと驚く。 

 俺が泣きそうになっていたから。



“アキ君・・・?”

 心配そうに俺を呼ぶ彼女。



「そんなこと、言うなよ・・・」

 俺の視界が少し揺れる。


「そんな寂しいこと、言うなよ・・・」



 チカが俺の前からいなくなってしまいそうな気がして。

 どうしようもない不安に襲われる。



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