声にできない“アイシテル”
 少しでもホテル経営のことを覚えたくて、通える範囲にある系列ホテルでバイトを始めた。

 雑用がほとんどだけど、働く社員さんたちの姿を見て、接客業の難しさとやりがいを肌で感じる。


 大学生活とバイトで毎日へとへとだ。


 でも、そんな俺を支えてくれているのがチカの存在。

 まめにメールをくれて、俺を励ましてくれる。


 休みの日は疲れている俺を気遣って、のんびり過ごすことに文句も言わない。

 俺の部屋で本を読んだり、宿題をしたり。




「ごめんな、チカ。
 どこも連れて行ってやれなくて」

 慣れないバイトでぐったりしている俺は、ソファーに身を投げ出していた。


 チカは床で本を読んでいたけど、その手を止めてこっちにやってくる。

 そして、俺の隣にストン、と腰を下ろした。

 
“気にしないで。
 私はアキ君のそばにいるだけで楽しいんだから”

 にっこりと笑うチカ。


 その笑顔に癒される俺。


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