声にできない“アイシテル”
「ただいま」


 大きな扉を開けて入ると、廊下の奥から伯母さんが出てきた。

「お帰りなさい。
 今日は遅かったのね」

 ふっくらと少し肉付きはいいけれど、動きはきびきびとしている。

 伯父さんと一緒に経営に携わっているためか、はきはきとした口調。

 優しい声。



「本屋に寄っていたから。
 連絡すればよかった?」

「ううん。
 このくらいの時間に帰宅なんて、よくあるわよね。 
 私が世話を焼きすぎるだけ。
 晃君はもう高3なのにね」

 47歳の伯母さんが肩をすくめる仕草は意外と合っている。


 生まれた時からの俺を知っている伯母さんは、もともと俺を甘やかしてくれていたけど。

 一緒に暮らすようになってからは、ますます甘くなったような気がする。



 伯父さんが『私と晃のどっちが大事なんだ?』と、苦笑混じりに言ってたほどだ。



 伯母さんの事は嫌いじゃない。

 むしろ、好きな部類に入る。


 でも、また俺の前から消えてしまったら?



 両親の様に突然いなくなってしまったら・・・?

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