声にできない“アイシテル”
 その人は少し困ったように笑って、頭をかく。

「もしかして忘れられちゃった?
 俺、徹だよ。
 山下 徹。
 留学先から帰ってきたんだ」


 その人が名前を告げると、チカの顔がパッと明るくなった。

“トオルお兄ちゃんなの?!
 久しぶりすぎて、誰だか分からなかったよぉ”

 チカが手話で話しかける。


「ははっ、6年ぶりだしな。
 それにしてもチカちゃん、ずいぶん大人っぽくなったなぁ」

 徹さんは嬉しそうにしげしげとチカを眺めている。


“私、そんなに変わった?”
 

「うん、綺麗になった。
 えと・・・」
 
 その男の人が俺に視線を向けた。


「桜井 晃と申します」

 俺は名前を名乗り、軽く頭を下げた。



「彼氏かな?」



 チカに問いかけると、彼女は真っ赤になりながらもうなずく。



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