声にできない“アイシテル”
 そんなことを考えるだけでぞっとする。


 きっと、今度こそ立ち直れない。



 だから俺は申し訳ないと思いつつも、心の中で一線を引いている。

 これ以上、親しくならないように。


 
 大切な人を失う苦しみは、もう二度と味わいたくないから。


 伯父さんも伯母さんも、こんな俺に気がついているだろうけど。

 あえて何も言ってこない。







「もうすぐ順二さんが帰ってくるから。
 そうしたらみんなで夕飯にしましょうね」

 靴からスリッパに履き替えている時、伯母さんが言った。


「伯父さんが7時前に帰ってくるなんて珍しいね」


 仕事で全国を飛びまわっている伯父さんは、月の半分は支社への出張。


 出張のないときは本社で仕事をしているけど。

 会議が長引いたり、接待とかで、早くても10時を過ぎてから帰ってくる。



「ほら、あの人今週はまだ一度も晃君とゆっくり話してないでしょ。
“そろそろ顔を合わせないと、忘れられるー”って言ってたわ。
 急ぎじゃない仕事は明日に回したみたい」

 手を口に当てて、くすくすと伯母さんが笑う。
< 25 / 558 >

この作品をシェア

pagetop