声にできない“アイシテル”
―――小学校ってことは、まだチカが話せていた頃だよな。



 チカはどんな声で『大好き』と言ったんだろう。

 俺はチカの彼氏なのに、彼女の声で『大好き』と言われたことがない。


 そんなことを今さら言ったところでどうしようもないって、頭では分かってる。



 だけど。

 チカが俺以外の男に、声を出して『好き』と言ったことがショックだった。


 俺が聞いたことのない、チカの声。

 なのに、目の前で昔話に花を咲かせているこの男は、聞いているんだ。


 しかも、『大好き』と言うセリフまで。 






 忘れていた胸の痛みが、ズクンとうずきはじめた。



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