声にできない“アイシテル”
 謝る俺に今井さんは首を横に振る。

「いいんですよ」


 終わってしまったことを詫びても、もう遅いというのだろうか?

「いや、でも。
 やっぱりよくないよ。
 本当に申し訳けないことをした」

 また頭を深く下げる。



「ああ、もう!!
 いいんですってば!!」


 土下座を続ける俺に向かって、今井さんが大きく叫んだ。




「・・・今井さん?」

 そろそろと頭を起こす俺。



「桜井さんは誤解してます」

「誤解?」


 彼女は大きくうなずく。





「だって・・・。
 私たち、何もなかったんですから」




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