声にできない“アイシテル”
「こうなったら、もう何を言われても驚かないよ。
 どうぞ」


 俺が促すと、彼女はさっきとは違って穏やかに話し出した。

「自分以外の人とお付き合いするわけですから、自分の思うようにいかないことは山ほどあると思います。
 それを他人と比べてアレコレ言っても、キリがないです。
 チカさんは話が出来ないだけで、他に障害はないんでしょう?」

「ああ。
 声以外はまったく問題ない。
 体も健康だし」


「だったら、それで十分じゃないですか。
 元気に生きていてくれれば・・・」


 言葉を区切った今井さんが少し寂しそうに笑う。

「つい最近まで付き合っていた私の彼、交通事故で亡くなったんです。
 だから、会いたくても会えない・・・。
 私に比べたら、桜井さんは恵まれてますよ。
 いつだって彼女に会えるんですからね」


 今井さんはスルリとベッドから降りて、大きく背伸びをする。

「あ~あ。
 桜井さんの事、狙ってたのになぁ。
 本当は彼女のことが大好きで。
 なのに、すねて、わがままで、甘ったれで。
 まったくもう!!
 ・・・あっ」


 口元を押さえた今井さんが、“しまった”という顔をして俺を見てくる。





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