声にできない“アイシテル”

愛して・愛されて

 ホテルを出て、今井さんは右に。
 
 俺は左へと進む。


―――チカに会いたい。

 素直にそう思った。


 会って、抱きしめたい。 

 そして謝りたい。


 時間は8時を過ぎたころ。

 まだチカは出勤前で、家にいるはず。



 俺は走り出した。
 


 
 駅からチカの家へと走りながら、俺は付き合いだした頃を思い出していた。


『チカだけが頑張ってもダメだし。
 俺だけが頑張ってもダメなんだ。
 2人で一緒に頑張らないとさ』


 自分からそう言ったのに、チカだけに頑張らせていたんだ。

 ホント、俺って甘ったれだ。


 自分で自分のほほを一発ぶん殴った。



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