声にできない“アイシテル”
 家のチャイムを押すと、奥からパタパタと足音が聞こえてくる。


「チカ!
 俺だよ!」


 扉が勢いよく開いて、顔を出したチカが目を丸くしている。

“アキ君!?
 急にどうしたの?”


「会いたくなったから」

 そう言って玄関の中にすべり込むと、ギュッと彼女を抱きしめた。


 突然現れた俺に、訳が分からなくなっているチカ。

 瞳を大きく開いて、オロオロとしている。



 俺は大きく息を吸い込んで、言った。

「チカ、ごめんな」


 メールを無視してごめん。

 『愛してる』と言って欲しいなんて、めちゃくちゃワガママでごめん。


 俺ばかりが愛情を欲しがってごめん。

 愛することを手抜きしてごめん。



「ごめんな・・・」


 何度も謝った。

< 271 / 558 >

この作品をシェア

pagetop