声にできない“アイシテル”

伯父さん

 着替えが済んだところで、ドアのすぐ横に据え付けられた内線が鳴る。


 この家はあまりに大きすぎて部屋まで呼びにくるのが面倒らしく、各部屋に一台ずつ内線電話が設置されている。


 連絡の内容は伯父さんが帰ってきたとのこと。

 俺は電気を消して、部屋を出た。



 ダイニングに入ると、スーツの上着を脱いでネクタイを緩めた伯父さんがもう座っていた。

「順二伯父さん。
 おかえりなさい」

 あいさつして、俺は自分の席に座る。

 4人がけテーブルの伯父さんの向かい側だ。


 ちなみにこのテーブルは伯父さん、伯母さん、俺が食事するためのもの。


 客用のダイニングには40人がゆうに座れる巨大な長テーブルがある。

 各支社の幹部を集めたパーティで使われるんだとか。


 一般庶民出身の俺としては、度肝を抜かれる事がこの家にはたくさんある。




「元気にしてるか?」

 人懐っこい笑顔の伯父さん。

 今年で50歳になったとは思えないほど若々しくて。


 弟の父さんのほうがいつも年上に見えていたっけ。
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