声にできない“アイシテル”

出張

 それからも、叔父さんと叔母さんはいろんな女性との見合い話を持ってくる。

 そして顔を合わせれば『チカと別れろ』と口にする。



 俺は別れるつもりなんて、サラサラない。


 誰に何を言われても、俺はチカから離れる気はないんだ。

 チカ以外の女性と結婚するつもりなんて、これっぽっちもありはしない。



 俺に会社を継がせたいって気持ちはありがたいし。

 これまで俺を育ててくれたことも、ありがたいと思う。


 だけど、俺はチカがいないと生きていけない。



 俺が社長じゃなくても会社は成り立つ。
 

 なにも血縁者が社長になる必要はない。

 優秀な社員は他にもいるんだし、その中から選べばいい。


 何度そう言っても、2人は納得してくれなかった。


 それでも俺は面と向って怒鳴るなんてことはしない。

 まして、“つかみかかって叔父さんとケンカ”なんてこともしない。


 ただ、ただ、自分の想いを懸命に話す。



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