声にできない“アイシテル”
 近くの喫茶店で向かい合わせに座る。


―――いったい、何だろう。


 一人暮らしを始めてから、アキ君の家には遊びに行かなくなった。

 それ以来の対面。


 私の前にいる叔母様はいつもと同じく柔らかい表情をしている。


 だけど、どこか思いつめた感じ。

 瞳の奥に影が見える。



―――いいお話じゃなさそうだな。

 どんな話をされるのかドキドキしながら待っている。



 だけど、叔母様は前に置かれたコーヒーカップを凝視したまま。


 ただ、沈黙が流れる。





 私は叔母様の視線の先に手を伸ばした。

“アキ君になにかあったんですか?”


 なかなか話し出さない叔母様に尋ねてみた。



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