声にできない“アイシテル”
 私の手話に気付いた叔母様は、ハッと我に返る。

「あっ、ごめんなさいね。
 誘っておきながら黙ってしまって」

“いいえ”

「晃君は元気よ。
 無事に着いたって連絡があったから」


 ニコッと微笑むその表情がぎこちない。



 私はなんとなく悟った。

―――アキ君のことで、私に話があるんだ。



 これまでに会おうと思えばいくらでも会えたはず。

 なのに、彼の出張を見計らって声をかけてくるなんて、そうとしか考えられない。


―――アキ君がいないうちに、私と話がしたかったんだ。




 ものすごく、いやな予感。






 私は落ち着こうとして、紅茶の入ったカップに手を伸ばす。


 私の手は小刻みに震えていた。


 


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