声にできない“アイシテル”
「桜井家の男は、みんな美形だからなぁ」


 伯父さんが言ったところで、鍋を持った伯母さんがキッチンから出てくる。

「そうやって、自分もかっこいいんだって事が言いたいんでしょ?」

 くすくすと笑いながら、テーブルの中央に鍋を置いた。

「話は後にして、食事にしましょ」


 伯母さんが鍋のフタをあけると、温かな湯気が立ち上り、クリームシチューのいいにおいがした。




 食事をしながら前に座る伯父さんをそっと見る。


 長男の圭一伯父さんよりも、父さんに似ている。

 歳が近いせいだろうか。


 顔立ちはもちろん、声や仕草なんかも似ているから。

 つい、父さんの面影を求めてしまう。


 この人は伯父さんだと分かっているのに。

 ほんの一瞬、父さんに見えてくる。



 伯母さん同様に俺のことを可愛がって入れていて。

『将来養子として、この家の籍に入ってもらいたい』

 と、言われた事がある。



 おじいちゃんの家で暮らしていた3年前。

 そんな話をされた。
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