声にできない“アイシテル”
「それなら」

 叔母様は名刺を取り出す。

「何かあったらここに連絡して。
 メールでも手紙でもいいわ」

 私のほうへ滑らせてきたそれをじっと見つめる。


 そしてやんわりと押し戻す。

“少しでもアキ君とつながっているものがあったら、私の心は揺らいでしまいます。
 彼とのつながりは何一つないほうがいいです”

 きっぱりと言った。


 私とアキ君の関係は、今終わったんだ。

 だから、叔父様とも、叔母様とも、もちろんアキ君とも連絡を取ることはもうない。





「そう・・・」

 私の言葉に、叔母様はためらいながらも名刺をしまった。


“すぐに留学先に発ちます。
 アキ君が帰ってくる前に日本を出たほうがいいと思うので。
 正直に説明をしても彼は納得しないでしょうし。
 だったら何も言わないほうがいいと思うんです。
 私も彼と顔を合わせるのがつらいですから・・・”


 私は叔母様に軽く頭を下げて席を離れた。


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