声にできない“アイシテル”
 その時の俺は、自分に向けられる言葉を信用する事ができなくって。

 父さんに似ている伯父さんからのその言葉が、余計につらくって。


 どう答えたらいいか分からず、返事が出来なかった。




 だけど、一生に暮らすようになって2ヶ月。

 俺が戸惑うほど優しくしてくれている。


 あの時に比べれば、言葉に対する不信感も薄れてはいた。


『養子になってもいいかもしれない』と、思えるまでに。



 でも、まだだ。

 全面的に信用するには、俺の心の傷は深すぎた。








 食事を終えて、伯母さんがコーヒーを入れてくれる。

 まだ熱いコーヒーにゆっくりと口をつけた時、伯母さんが突然立ち上がりキッチンへと駆けていった。


「九州のお友達から届いたのよ。
 みんなで食べましょうね」

 
 戻ってきた手には、ガラスの器に盛られた桃と苺。

 
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