声にできない“アイシテル”
 私は袋の中からごそごそと買った商品を取り出す。


 紙パックのオレンジジュース。

 卵のサンドイッチ。

 
―――あ・・・。

 私は息を飲んだ。



 視線の先にあったのは1本の缶コーヒー。

 アキ君がいつも飲んでるコーヒーだ。


 もう買う必要ないものなのに。

 彼がこの部屋に訪れることはもうないのに。


 無意識に買ってしまったらしい。




 それを見たとたん、私の目に涙が溢れた。

 必死で我慢していた感情が爆発する。



―――アキ君!
   
 
 震える両手で缶コーヒーを握り締める。





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