声にできない“アイシテル”
 泣き疲れてそのまま眠ってしまい、リビングで朝を迎えた。

 頭も視界もぼんやりしていて、ノロノロと起き上がる。


 そっと指先でほっぺに触れると、うっすらと濡れた跡がある。

 眠りながらも泣いていたみたいだ。


―――一生分泣いたかも・・・。



 声が出なくなると聞かされた時よりも涙を流した。


 あの時も絶望が私を包んだけど。

 その時よりも悲しみが上回っていた。


 でも、泣いたところでどうにもならない。
 

 自分で別れを決めたんだから。



 ジワジワと滲んでくるん涙を強引にぬぐって、洗面所に向った。





 鏡の中にいるのは、泣きはらして真っ赤な目をした私。


―――変な顔。

 いつもなら笑ってしまうのに、顔の筋肉が固まっていて苦笑いすらできない。



 冷たい水でジャブジャブと顔を洗う。


 泣きすぎたからほっぺに水がしみる。

 その痛みを感じながら、顔に水をかける。


 滲む涙が止まるまで何度も、何度も。
< 314 / 558 >

この作品をシェア

pagetop