声にできない“アイシテル”
 おずおずと伸びる私の手。

 でも、触れる寸前で手が止まる
 

―――アキ君・・・。

 彼と過ごしてきたこれまでの時間が次々と浮かんでくる。


 たまにケンカをすることもあったけど。


 思い出すことのほとんどは幸せな記憶。

 彼に愛されていたという記憶。


 だけど、もう終わったことだ。


 枯れたはずの涙がうっすらと滲んでくる。


―――大人になっても泣きムシだなんて・・・。


 瞬きで涙をごまかした。

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