声にできない“アイシテル”

リングと彼への想い SIDE:チカ

 それからは留学の準備と引越しのための片付け。


 もともと荷物はそんなに多いほうじゃないんだけど。

 それでも、いつの間にか増えた服や本は思っていたよりも多そう。


 私はもくもくと作業をする。

 少しでも手を止めたら、決心が鈍ってしまいそうだから。


 
 捨てる物と実家に送るものとを分けていくうちに、どちらにも当てはまらないものがいくつか出てきた。


 アキ君が使っていたマグカップやお箸。

 パジャマや簡単な着替えもある。



―――捨ててしまおうか・・・。
   取っておいても、どうにもならないし。

 マグカップをゴミ袋に入れようと手に取る。


 でも、やめた。


―――まだ使えるのに、捨てるのはもったいないよね。



 私は彼の荷物を小さめの箱に詰めてゆく。


 そして荷物の一番上に短い手紙を乗せて、箱を閉じた。



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