声にできない“アイシテル”

動揺

 階段を駆け上り、廊下を走って部屋に戻る。

 少し乱暴気味にドアを閉めると、じゅうたんの上にごろりと転がった。



 何となく心の奥が動揺しているけど、そのうち消えるだろうか。


 心臓がドキドキしているのは、走ったから?

 それとも・・・?





「は?
“それとも”ってなんだよっ?!」

 俺らしくない思考に、動揺は増すばかり。



「そ、そうだ。
 漫画でも読んで、気分転換しよう」

 動揺をなかった事にして、ガバッと立ち上がる。

 急いで机の上に置いたカバンから、今日買った本を取り出した。



 
 ベッドの上でしばらく読みふける。

 静かな部屋にはページをめくる音だけ。



 その手がふいに止まった。

「あの子、真面目そうだからこんな漫画は読まないのかもなぁ」


 さっきもそうだったけど、妙にあの子の顔がちらつく。

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