声にできない“アイシテル”
 家のチャイムを押して、出てきたのはお母さんだった。


「こんにちは」

「あら、桜井君。
 どうしたの?」

「チカに会いに来ました。
 引越ししたのを知らなくって。
 ここにいるんですよね?」


 俺の話を聞いて、お母さんの顔色が少し曇る。

「・・・ここにはいないわよ」


「え?
 もしかして、入院でもしてるんですか?」


 お母さんがものすごく驚いた顔になった。

「知らないの?!」

「何をでしょうか?」

 俺は首をかしげながら、訊きかえす。


「あの子、留学してるのよ」



「・・・は?」

―――チカが留学?



 一言もそんなことを聞いていなかった俺は、お母さん以上に驚く。






< 331 / 558 >

この作品をシェア

pagetop