声にできない“アイシテル”
―――大丈夫。
   大丈夫だ。

 自分を落ち着かせるために、何度も『大丈夫』繰り返しつぶやく。 


―――これまでに一度だって、チカは俺に隠し事なんてしたことなかったじゃないか。


 車を急がせる。

 飛び出すように降りて、チカの職場に駆け入った。



 だけど。


 そこで聞かされたのは、お母さんが言っていたことと何一つ変わらない事実。








 足を引きずるように歩き、やっとの思いで車に乗り込んだ。


 目に入ってきたのは、彼女に渡すはずだったたくさんのチョコレート。



 ロールキャベツを作って待ってると言ったのに。

 どこにも行かないって言ったのに。



―――チカ、どこに行ったんだよ・・・。


 ハンドルを抱えるようにもたれ、俺はしばらく動けなかった。



< 334 / 558 >

この作品をシェア

pagetop