声にできない“アイシテル”

チカからの手紙

 どうにか車を運転して、家に帰ってきた。


「ただいま・・・」

 力なく玄関に入ると、叔母さんが出てきた。

「どうしたの?
 ずいぶん帰りが早いのね」

「うん。
 チカに会えなかったから・・・」


 ポツリとつぶやくと、叔母さんが首をかしげる。

「でも、今日は約束をしてたんでしょ?
 さっき電話で言ってたじゃない」

「うん」

「チカちゃんに急用でも入ったの?」

 
 俺はゆっくりと首を横に振った。

「違う。
 留学したんだって」


 叔母さんはちょっと大げさに眉をひそめる。

「・・・あら、そう。
 また急なことね」

 驚いた表情の割りに声は冷静だ。 


 だけど、俺には叔母さんの様子に気を配る余裕なんてない。


 頭の中では『留学』という言葉が、ぐるぐると回っていて。

 不安と喪失感で倒れないようにしているのがやっと。 
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