声にできない“アイシテル”
 扉を開けると、帰っていた叔父さんが驚いて俺を見る。

「どうした晃。
 なんだかあわてているみたいだが?」

「あ、うん。
 俺の留守中に手紙か葉書が届いてなかった?」


 すると叔母さんが部屋の奥から箱を持ってきた。

「手紙はないけど、荷物を預かっているわ」


 叔母さんから渡される小さめのダンボール。

 差出人はチカだった。



 ふっと笑顔になる俺。

―――ほらな。
   チカは黙っていなくなるような薄情な人間じゃないんだ。
   まして、俺の前から消える理由なんてないんだし。


 急いで箱を開ける。

 ばっと開いて、真っ先に飛び込んできたのは短い手紙。



“アキ君、さよなら。
 もう会いません”



 間違いなく、彼女の字だった。


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