声にできない“アイシテル”
 ベッドの縁に腰を下ろし、くしゃくしゃになった便箋をゆっくりと開く。

 書かれている文面は、時間が経っても何一つ変わっていない。


―――どうしてこんな手紙を・・・。



 俺は野良犬に追いかけられた彼女を家まで贈っていった時のことを思い出していた。

 
“私がアキ君から離れるはずないよ!!”


 小さな体を怒りで震わせて、はっきりと言った。


 その彼女が突然、俺の前から姿を消した。

 何も言わず。

 何も残さず。



―――どうして?
   どうしてっ?!

 めまいと吐き気が一気に襲ってくる。

 数年前と同じく、重たく冷たい闇が目の前に広がってゆく。



―――両親のように、チカも俺のことを捨てたのか?!

 無意識に唇をきつく噛み締める。

 ギッ・・・。

 低く鈍い音が耳の奥に響いた。


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