声にできない“アイシテル”
「そんなはずない!」

 叔父さんを真正面から更ににらみつける。

 だけど、大グループの社長としての地位を築き上げたこの人はそんなことではひるまない。


「だったら連絡先をいまだに知らせてこないのはなぜだ?」

 
「それは、きっと何か事情があって・・・」

「2週間も経つのに連絡一つよこさない事情とはなんだ?
 それは“別れたい”ということじゃないのか?」

「違う! 
 チカはこんな一方的なことをするような人間じゃない!!」


 俺は見合い写真を叔父さんに投げつけ、自分の部屋へと駆け戻った。








 厚い木で出来た仕事机にこぶしを打ち付ける。

「チカ。 
 チカ・・・」

―――どこに行ってしまったんだ?
   どうして何も知らせてくれないんだ?

 何度も机をたたく。


―――別れたいなんて、何かの間違いだ!!

 机にすがりつくように、ずるずると床へ倒れこんだ。

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