声にできない“アイシテル”
 向かい合わせでイスに座った。


 俺は書類ケースから数枚のCD-Rを取り出す。

「新しいプログラムはすでに完成済みだ。
 この中にすべて入ってる。
 これで、今までの何倍も作業効率があがるはずだ。
 それと・・・」


 冊子になった書類を横山に手渡す。

「問題が起きた時のための対応マニュアルだ。
 特に金銭面でのトラブル項はよく目を通してくれ」


「分かりました」

 横山が深くうなずいて、書類を受け取る。


「直接的な資金については××銀行の頭取に連絡するように。
 俺の名前を出せばすぐに動いてくれるだろう」


 それを聞いて、横山が少し目を大きくする。

「あの気難しい頭取と、よくそこまでの仲になれましたね?
 現社長ですら、顔を合わせることもできないというのに」


 金融界のトップである××銀行の頭取。 

 彼の後ろ盾が得られれば、何も怖いことはない。





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